システムキッチンはまだ
家を訪れて奥さんの作ってくれた飯を喰
う(これは台所の設計の大きなヒントになる)。それも突然訪れて客用でない日常の飯喰わ
せてもらうのが一番。家で夫人や子供達と御主人の帰ってくるのを待っていたらその日の夕
食はおにぎりと味噌汁とサラダだけという家もありましたネェ。
新しい家の設計の度に施主夫人と恋に落ち、六回も結婚したというアメリカの天才建築家
フランク・ロイド・ライトみたいな肉迫取材または心情交流すべきか、するべきでないかに
ついては悩むところ多いのだが、天才でないわれらなかなかそこまでは行かない。
かわりにせっせと子供達と遊んで何とか家族ぐるみの交流を行なおうとする。今ぼくの知く
っているプロレスの技の数々、四の字固めから、ヘッドロック、インディアン・デスロック
恥はや猫全部彼らに習ったものだし、三○年代のゲィリー・クーパー風腰のピストル○・三秒
の早射ちで、当然こちらが倒れてやり、もだえ死ぬ様から、腹中の弾丸抜き出し、その後を
一針ずつ縫い、最後に糸を口で切る真似までしてみせる技の細やかさもこの頃覚えたもの。
もちろん調書も使う。
一種のアンケート調査である。調書に文字で表現できるものには限
りがあるし、もし表現しているとしても、他人である建築家に正しく話すとは限らない。
聞いたこと、読んだことを事実だとすっかり信じてしまってミスをした若い頃の体験があ
れば、自分の思い込みから全く逆の受け取り方をしてしまったことがある。